主な研究テーマ

当研究室は、設計実務の経験豊富な教員のもと、大規模な建築物に木質構造を適用するために必要な要素技術や構造設計手法の研究・開発を実施します。また、CLTや耐火木材といった最新の木質材料を活用しながら、新しい構造デザインの提案も実施します。全ての研究・開発は新しい建築を実現させるためにあるという方針のもと、基礎的な研究からより実務的な構造設計まで幅広く研究活動を展開していきます。
 

◇ 中大規模木造建築の実現と普及に向けた研究開発

欧米では、高さ60mを超える大規模な超高層木造建築が既に実現されていますが、日本でも、耐火木材、CLTなどの最新の木質材料が実用化されるとともに徐々に高層化が進んでいます。しかし、大地震時の損傷や変形、高荷重下におけるクリープ特性、耐火性能を考慮した接合ディテール、遮音・振動の問題、施工性の問題など、多岐にわたる課題があります。本研究室では上記のような新たな課題を抽出し、課題解決に向けた方策を研究し、提案していきます。
 

 

◇ 木質構造と異種構造を組み合わせたハイブリッド構造に関する研究開発

木質構造とその他の構造を組み合わせることで、木質材料を有効活用できます。例えば、CLTなどの木質材料を耐震要素として異種構造(鋼構造、鉄筋コンクリート構造等)に用いたハイブリッド構造です。耐震要素に特化した構造部材は耐火被覆が要求されないことが多いため、大規模な建築にも木質材料を適用しやすくなります。構造実験や構造解析を実施しながら、ハイブリッド構造としての構造性能評価に関する検討を実施します。
 

 

 

◇ 多様化した木質材料の特徴を活かした構造デザインに関する研究開発

日本でもCLTが実用化されたことで、従来の柱、梁のような線材から、CLT、LVL等の厚みのある面材まで、多様な木質材料が適用できるようになりました。当研究室では、実プロジェクトへの適用を視野に入れ、それらの構造特性、材料特性を活かした新しい構造デザインを提案します。そのために必要な要素技術、特に各部材の接合技術に関する研究・開発を実施し、知見を蓄積していきます。
 

 

研究設備

◇ 研究ツール

本研究室では、様々な最新プログラムを用いて研究開発を実施しています。実務の世界でも広く活用されているものばかりであり、研究活動の中でこれらを一つでも使いこなせるようになれば、将来、構造設計を志望する学生にとっては大きなアドバンテージとなります。
 
・汎用構造解析プログラム:Midas iGen
建物全体のフレーム解析からFEMによる詳細解析まで、建築構造分野での様々なニーズに応える汎用解析ソフトウェア。どのような形状でもモデリングが可能で静的解析、板・ソリッド要素などを用いたFEM解析、各種振動解析、材料・幾何学非線形解析、静的増分解析、座屈解析など多様な構造解析が可能。構造設計の様々な場面で利用されています。木質構造の世界では、単位接合具の解析から、フレーム全体の構造解析まで幅広く対応でき、本研究室でも最も利用頻度が高い構造解析ツールです。
 
・任意形状の立体フレーム解析プログラム:SNAP
主に、構造フレームの時刻歴応答解析、応力解析、増分解析に使用します。構造設計実務では超高層建築や免振構造の設計に用いられることが多く、建築構造の研究分野においても幅広く活用されています。モデリングする際の設定の多様さと自由度が特徴で、構造フレームの構造解析においてはできないことが無いと思えるほど、高度な構造解析が可能となっています。本研究室では、CLT耐震壁を用いた構造物の耐震性能評価に関する研究において使用しています。
 
・一貫構造計算プログラム:Super Build🄬/SS7
本研究室では、研究開発の実用化を視野に入れ、建築構造の試設計を実施することがあります。その際、構造設計実務で最も高いシェアを有するSS7を用いています。構造設計実務における利便性が追求されたプログラムであり、より実際の設計に即した検討が可能となります。また、MIDASやSNAPにで作成した構造モデルによる解析結果との比較を行うことで、各プログラムで作成した解析モデルの妥当性の確認にも利用しています。
 
・3次元モデリングツール:Rhinoceros🄬
昨今、3Dモデリングツールを用いて自由な造形を実現しようとする建築が増えつつあります。Rhinocerosでは独自のアルゴリズムにより曲線や曲面を柔軟にかつ数学的にモデリングすることが可能となっています。更に、Grasshopperというアドインツールが搭載されており、まるでプログラミングをするかのように「カタチ」を記述し、その変数を操作することで、連続的にカタチを変化させることが可能となっています。いわゆる「パラメトリックデザイン」の急先鋒です。MIDASなどの構造解析プログラムとも相性が良く、モデルを連携させることで、構造デザインの可能性を無限に広げることが可能です。
 
・各種CADソフトウェア:AUTODESK社
多くのCADソフトウェアは教育機関に無償提供されています。本研究室では、AUTODESK社のAUTOCAD、REVITを導入し、試験体や実験計画の作図に使用しています。また、RhinocerosにはREVITとの連携を可能とするツールも搭載されています。
 

◇ 構造実験

残念ながら、岡山大学には構造実験ができる施設がありません。そこで、本研究室では学外の様々な施設を利用して構造実験を実施しています。これまでに利用した構造実験施設の例を示します。
BXカネシン開発試験センター
京都大学木質材料実験棟
建材試験センター西日本試験所
今後も、実験の特徴に合わせて外部の実験施設を臨機応変に選定し、価値ある構造実験を実施していきます。
 


過去の研究開発

竹中工務店在職中に実施した研究開発は以下のリンクをご参照ください。木質構造に限らず、様々な研究開発を実施してきました。そのおかげで、当研究室でも様々な構造材料や構造形式を扱うことが可能です。

 
All Photo by Koji Fukumoto