すべての人に木質構造を

私たちは「すべての人に木質構造を届ける」ことを目指します。
「すべての人」とはあらゆる人が心地よい木の空間を享受できることだけでなく、どんな規模や用途の建築においても、誰もが自由に設計し作ることができる汎用性の高い木質構造を提供することも意味します。
そして、それにより森林資源の持続的な活用を促し、すべての人が生きる地球環境の維持に貢献していきます。
 


今、木質構造が注目されている

(出典:令和3年度 森林・林業白書)

 
今なぜ、木質構造が注目されているのでしょう?
その理由の一つは、木質構造の魅力です。戦後、日本では大規模な木質構造は規制され、戸建て住宅を中心に発展をしてきましたが、近年は、大規模建築への適用が急速に進んでいます。これまで大規模建築の構造は高い耐震性能が期待できる鋼材とコンクリートだけで造られてきましたが、近年は木質構造の技術が大幅に向上し、大規模な非住宅の建築が木質構造で実現できるようになりました。木質構造でできた建築は、木の表情、木の手触り、木の香りに満ちた快適な空間を提供するだけでなく、無機質だった街の表情を豊かなものに一変させる魅力を放ちます。
また、地球環境の保護も大切な目的です。日本の国土はその2/3が森林に覆われており、年々その蓄積量が増加しています。しかし、日本国内ではその森林蓄積量の増加分をほとんど使い切れておらず、森の資源を十分に活かせていないのが現状です。木は適切な年齢(50歳くらい)で伐採して木材として活用し、その分、新たな木を植えて育てるというサイクルを維持することで、健康な森を保つことができます。そして、健康な森を「持続的に」保つことによってこそ、地球温暖化の原因となっているCO2を森林に吸収させ、豊かで多様な地球環境を守ることが可能となります。木造建築の普及は森林資源活用のための強力な手段として期待されています。
 

木材だけじゃない、あらゆる構造材料を使い分ける


 
私たちは、木質構造を主な研究テーマとした研究室です。しかし、木質構造「だけ」を扱うわけではありません。
大規模建築に木質構造を適用するにあたり、その全てを木質構造とするのではなく、木材、鋼材、コンクリートを適材適所に使い分けることが結果的に木材利用の促進につながると考えています。木材を鋼材やコンクリートと組み合わせることで、木材が持つ構造性能をより効果的に引き出すことが可能だからです。もちろん、木質構造100%の大規模建築を否定するわけではなく、研究対象からも外しませんが、より効率的、効果的に木材を利用するための「ハイブリッド木質構造」に着目しています。
そもそも、建築構造で扱う主たる材料は、鋼材、コンクリート、木材の3種類しかなく、他の工業分野に比べると扱う材料の種類は少ないのです。鋼構造と鉄筋コンクリート造しか扱えない、あるいは、戸建ての木造住宅しか設計できない、というのではエンジニアとして少し寂しい気がしませんか。木材(木質構造)、鋼材(鋼構造)、コンクリート(鉄筋コンクリート構造)の特徴を理解し、活かしながらも、木材(木質構造)を主役にする構造設計、構造デザインを目指します。そしてそのために、様々な構造解析ツール、各地の構造実験施設、最新のデジタルツールなどを活用して研究を進めていきます。
 

総合エンジニアリングとしての木質構造


 
木質構造による大規模建築を実現するには、構造分野の知見だけでなく、総合的な観点でエンジニアリングを進める必要があります。
まず、大規模建築を支えるために、木材の「強さ」や「軽さ」を活かし構造性能を確保することが大前提となります。それに加えて、大規模建築には、建築基準法で定められた防・耐火性能を付与することが求められます。従来は、木材を耐火被覆材で覆うことで耐火性能を確保することが一般的でしたが、それでは豊かな木の表情が見えなくなってしまいます。そこで、近年、耐火集成材、耐火木材という耐火性能を確保した部材が開発され、すでに実際の建築でも採用されています。
一方で、木材に耐火性能を付与したり、他の構造種別とハイブリッド化した場合、その構成が複雑化し製造や施工の効率を低下させる要因となります。本来、木質構造は、その加工性、施工性の高さがメリットの一つとして挙げられますが、そのメリットをできるだけ損ねないように構造計画することも重要です。
そして、木質構造ならではの形態、空間、美しさを実現することは、木質構造の魅力を発信し木材利用を促進する上で最も重要です。
このように、木質構造で大規模建築を実現するには、あらゆる要因に配慮し、これらをバランスさせる総合的なエンジニアリングが必要不可欠なのです。構造的な強さだけでなく、防火・耐火、作り易さ、美しさの全てに配慮し、実際の建築として具現化させること。これが私たちの基本的な研究方針です。

寄付企業一覧

当研究室は民間企業からの寄付金により運営されている寄付講座です。下記に寄付企業一覧を示します。
(会社名をクリックすると各社のHPのリンクします。)
  院庄林業株式会社
  株式会社エヌ・シー・エヌ
  株式会社大本組
  さんもく工業株式会社
  清水建設株式会社
  ジャパン建材株式会社
  住友林業株式会社
  株式会社大三商行
  中国林業株式会社
  ナイス株式会社
  BXカネシン株式会社
  前田建設工業株式会社
  銘建工業株式会社
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