RESEARCH
防災水工学を、河川から流域、そして社会へ。
From Rivers to Watersheds, and to Society.
INTRODUCTION
近年、気候変動に伴う豪雨災害の激甚化・頻発化により、洪水リスクへの対応はますます重要な社会課題となっています。
本研究室では、防災水工学を基盤として、三角形非構造格子を用いた詳細な平面二次元解析モデルを研究の共通基盤とし、河川、水田、市街地などにおける水の流れと水災害を研究しています。
詳細な数値解析によって水理現象を理解するとともに、高性能計算やAIなどの技術を組み合わせることで、解析技術の高度化・高速化を進めています。
さらに、得られた知見を流域治水、洪水予測、避難シミュレーションなどへ展開し、水災害の理解から予測、そして防災・減災への応用までを一貫して扱う研究を目指しています。
01
洪水氾濫解析
High-Resolution Flood Inundation Modeling
洪水氾濫解析は、本研究室の研究を支える基盤技術の一つです。
本研究室では、三角形非構造格子を用いた二次元浅水流解析モデルを開発し、
河川、堤防、道路、建物などの複雑な地形・地物を詳細に表現しています。
非構造格子の柔軟性を活かすことで、河川から市街地までを一つの解析領域として扱い、
河川からの外水氾濫と降雨による内水氾濫を包括的に解析できることが大きな特徴です。
また、詳細な地形・地物を解析モデルに反映することで、浸水の空間的な広がりだけでなく、
時間とともに変化する浸水過程を捉えることを目指しています。
さらに、GPUを活用した高性能計算により、大規模かつ高解像度な解析の高速化にも取り組んでいます。
この詳細な洪水氾濫解析モデルが、田んぼダム、避難シミュレーション、AIによる高速予測など、
他の研究テーマの基盤となっています。
02
河川水理・準三次元解析
River Hydraulics & Quasi-Three-Dimensional Analysis
河川では、流れの構造を正確に把握することが、河川計画や洪水対策を考える上で重要です。
本研究室では、河川における流れの特性を明らかにするため、
二次元解析を基盤とした準三次元的な河川流解析に取り組んでいます。
複雑な河道形状や流れの分布を数値的に再現し、洪水時の水面形や流速分布などを解析することで、
河川における水理現象をより詳細に理解することを目指しています。
数値解析と実際の河川現象を結びつけながら、
河川の計画・管理に活用できる水理解析技術の構築を進めています。
03
河床変動・土砂水理
Sediment Transport & Riverbed Dynamics
洪水時の河川では、水の流れだけでなく、土砂の移動によって河床形状が大きく変化します。
本研究室では、河川の流れと土砂移動を対象として、
洪水時の河床変動や河道形状の変化を数値的に解析する研究に取り組んでいます。
水理現象と土砂移動を関連づけて解析することで、
河床の変化が洪水流や河川の安全性に与える影響を明らかにし、
河川の維持管理や治水対策につながる知見の獲得を目指しています。
04
流域治水・田んぼダム
Integrated Watershed Management & Paddy Field Dams
気候変動による豪雨災害への対応では、河川だけでなく、
流域に存在するさまざまな土地や施設が持つ治水機能を活用することが重要となっています。
本研究室では、流域治水の具体的な取り組みの一つとして、
田んぼダムによる洪水流出抑制効果に着目した研究を進めています。
特徴は、水田を単純な貯留施設として扱うのではなく、
水田ごとの地形や構造を詳細にモデル化し、
洪水時の水の流入・貯留・流出過程を解析することです。
詳細な数値解析を用いることで、降雨条件や田んぼダムの配置などによる治水効果の違いを定量的に評価し、
より効果的な導入方法を検討しています。
05
防災・避難シミュレーション
Flood-Informed Evacuation Simulation
洪水から人命を守るためには、浸水が「どこで起こるか」だけでなく、
「いつ、どのように変化するか」を把握することが重要です。
本研究室では、建物や道路などの地物を詳細に表現した洪水氾濫解析と避難シミュレーションを組み合わせ、
時間的に変化する浸水状況を考慮した避難行動の解析に取り組んでいます。
洪水氾濫解析から得られる時系列の浸水情報を用いて、浸水深に応じた避難歩行速度の変化を考慮し、
時間とともに変化する安全な避難経路を動的に探索します。
さらに、避難所の追加や配置変更による避難時間や避難完了率への影響を評価し、
より実効性の高い避難計画の検討につなげています。
06
AI・高性能計算による水災害予測
AI & High-Performance Computing
詳細な洪水氾濫解析は、水災害を高い精度で理解するために重要である一方、
大規模・高解像度な解析には多くの計算時間を必要とします。
そこで本研究室では、高性能計算による物理モデルの高速化と、
AIを用いたサロゲートモデルの構築に取り組んでいます。
AIの学習には、本研究室で開発・検証してきた高精度洪水氾濫解析モデルによる計算結果を用います。
目指しているのは、AIだけで現実の洪水を直接推定することではありません。
検証された高精度な物理モデルと同等の解析結果を、
より短時間で再現できるサロゲートモデルを構築することです。