PHILOSOPHY
研究室の理念
地盤・地下水
私たちが利用している全ての社会基盤構造物は,地盤が支えており,最近地震や集中豪雨による土構造物(斜面,堤防,盛土など)においての地盤災害により人命や財産の被害が発生しています。このような地盤災害の防止と軽減のためには,地盤の強度特性および浸透特性を計測・評価する研究を行い,外的作用に対する地盤材料の応答を正確に把握することが重要です。また,地下水の豊かな利用や未来の水資源として汚染からの保全のためには,地盤と地下水間の複雑な相互作用を解明し,その力学挙動を明らかにすることが必要です。よって,安心・安全な地盤・地下水環境作りを目指して,野外調査,室内試験および数値解析によるシミュレーションを用いて研究を行っています。 また,近年,環境問題が多方面にわたってクローズアップされている中で,土壌汚染や地下水汚染に代表される地盤環境問題が全国各地で問題になっており,すでに深刻な社会問題となっているものもあります。地盤はいったん汚染されると,その修復には莫大な費用や時間を要します。したがって,汚染物質の地中での挙動を定量的に評価し,汚染土壌を効率よく改善するためには土壌の汚染度を簡便かつ正確に測定することが重要です。また,地盤汚染問題の他にも,斜面安定や大深度地下空間利用である放射性廃棄物処分問題等,地盤工学及び地下水工学における課題は未だに多く残されています。地下水を取り扱う問題は多方面に渡って浮上してきており,さらにその課題はより複雑化してきています。具体的には,地下水汚染における汚染源は不飽和領域に存在することが多いため,不飽和地盤に対する物質移動状況の把握が必要です。しかし,これらに関する解析手法の開発は進んでいるものの,その基礎となる測定手法の開発が遅れているのが現状です。例えば,放射性廃棄物の地層処分問題では,放射性廃棄物を覆う人工バリアの最も外側の部分に低透水性物質(ベントナイト)を緩衝材として用いることが計画されており,処分場の安全性を評価する上でこの緩衝材の特性を把握することが急務となっています。しかし,極端に透水性が低いことや,吸水によって膨潤を生じるなど,その浸透特性の評価が非常に困難となっており,その計測手法の開発が求められています。本研究室で取り組む研究は,これらの問題に対して,地盤特性や地下水浸透特性を支配する物理定数を正確に把握し,模型実験や数値シミュレーションを駆使して,現象のメカニズムを解明することを目的としています。
STAFF
研究室を支えるスタッフ
小松 満 教授
土砂災害の軽減と地盤・地下水環境の保全を目指して,最新のセンサー技術や情報ネットワークシステムを活用した地盤災害発生予知システムの開発に取り組んでいます。また,廃棄物などの汚染物質から水資源としての地下水を保全し,安心・安全に生活できる地盤環境を持続するために,地盤と地下水の状況を調査する方法や新しい観測技術開発につながる教育・研究を行っています。
古川 全太郎 准教授
豪雨によって起こる山間部斜面の災害リスクを広域的に評価し,人的被害をゼロにするソフト対策の確立を目的に,植物根系による斜面補強効果を考慮した斜面安定解析手法や,将来の気候変動による降雨量の増加を考慮した崩壊斜面の推定手法の開発に取り組んでいます。また,植物の生命活動で発生する生体電位の変動をモニタリングし,地すべりを検知する新しいセンサーの開発にも取り組んでいます。